GUIDE 07 / 07
動体視力トレーニングは効果があるのか — 研究から見る可能性と限界
ビジョントレーニングで打撃成績が向上したという研究と、8週間のトレーニングでKVAが向上しなかったという研究。何を期待でき、何に注意すべきかをまとめました。
「動体視力を鍛えるトレーニング」はスポーツの現場で人気があります。研究結果は期待と限界の両方を示しています。重要なのは、テストのスコアが上がることと実際のパフォーマンスが向上することは同じではないという点です。
肯定的な報告
Clarkら(2012)はアメリカのシンシナティ大学野球部にシーズン前6週間ビジョントレーニングを実施し、チーム打率が前年の0.251から0.285に、長打率が0.033上がったと報告しました。ただしランダム化対照群を設けた実験ではなく前シーズンとの比較であるため、選手構成や他のトレーニングの影響を切り分けることは困難です。
武道選手の研究(MuiñosとBallesteros、2015)のように、動いている対象を長く追い続ける運動を継続している人の動体視力が良く、高齢になっても低下が少ないという報告もあります。短期間のトレーニングよりも長期にわたる実際の運動に関連した結果です。
効果がなかったという報告
日本のKVA研究をまとめたレビューによれば、大学野球選手に8週間、専門的な指導または市販ソフトウェアで視覚トレーニングを行わせましたが、KVAは向上せず、中学生を対象にした追跡研究も同様の結果でした(Sawakiら、2022)。
なぜ結果が分かれるのか
- 何を訓練したか — DVAの個人差は主に目で対象を追いかける能力に由来するという研究があります(Uchidaら、2012)。この能力を直接使わないトレーニングは効果が小さい可能性があります。
- 慣れ — 同じテストを繰り返すとコツをつかんでスコアが上がります。これは視覚能力の向上というより課題学習である可能性があります。
- 転移の問題 — 画面上の環をうまく見分けられるようになることが、実際の競技場でボールをよく見ることにつながるかは別途確認が必要です。
試してみる価値があること
- 定期的に測定して記録する — 同じ条件で週1回程度測定すると、コンディション・疲労・睡眠による変化を見ることができます。最初の数回は慣れの過程なので、推移を見る際は除外してください。
- 8方向Cで測定する — 偶然正解する確率が12.5%と最も低く、偶然の影響が少なくなります。
- 矯正状態の確認 — 眼鏡・コンタクトレンズの度数が合っていなければ、どんなトレーニングよりも矯正が先です。
注意すべきこと
- 速い動きを長く見ると目が疲れます。一度に数回だけ行い、休憩を取ってください。
- 光に敏感、または光過敏性発作の既往がある場合は、速く点滅する画面テストを避けてください。
- 急に動いている対象が見えにくくなった、視野の一部がぼやける、物が二重に見えるといった場合は、トレーニングではなく眼科の診察が必要なサインかもしれません。